第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会(The 57th Annual Scientific Meeting of the Japan Atherosclerosis Society)

会長あいさつ

会長:島野 仁 写真
第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会
会長 島野 仁
(筑波大学 医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科)

第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会を、2025年7月5日(土)~6日(日)につくば国際会議場において金沢医科大学梶波康二先生とともに開催させていただきます。 つくばでの開催は、2008年第40回故山田信博先生以来となります。17年の間につくばエクスプレスをはじめ学園都市も姿を変えてきました。 来筑の際は、学会と併せて最近の若者の街の変化も楽しんでいただければと思います。

梶波先生のご挨拶にもありますように動脈硬化性疾患に対する臨床、研究の向き合い方もすこしずつ変わってきました。動脈硬化学会も、創設時代の動脈硬化そのものの成り立ちを紐解く時代から、その手前やその後:予防や行末の臓器不全に研究のフォーカスが移ってきている気がします。前者はGWASやPRSなど遺伝的アプローチ、後者はオミクスや一細胞など網羅的解析などいずれにせよ包括的統合アプローチによるシスマティックあるいはインフォマティクス的データ解析が主流になってきました。 かつてのようにマクロファージ泡沫化の機序は?scavenger receptorを探せ!といった1点突破型分子生物学的アプローチはやや隔世の感があるかもしれませんが、それこそが現在のエビデンスのサイエンス的根底のひとつひとつになっていることを忘れてはなりません。 動脈硬化成因の追求の結果さまざまな学際情報が一見バラバラだが集約され炙り出されてきたのが組織脂質の蓄積異常と免疫炎症の2大病態の融合です。この概念はその後の様々な慢性疾患の臓器障害機序に普遍化されて臓器不全の最終共通経路として確立されていったと思います。 『人は血管とともに老いて臓器に終わる』の裏返しかもしれませんが。また動脈硬化学会と多くの臓器疾患の学会と合同シンポが拡がりを示すことも学際学会としての成果のあらわれではないでしょうか。

私どもの教室は長く脂質代謝の研究、特に臓器の脂肪酸の研究を展開してきました。動脈硬化によい脂肪酸、悪い脂肪酸をはじめ、臓器脂質の量と質がさまざまな臓器、疾患の病態に関わることを観察してきました。 その出口はありとあらゆる組織にひろがり、今後は動脈硬化の標的もすべての臓器のwell beingにすべきかなと思います。

本学会のテーマに関しては、私共が長く関わり続けた脂質代謝に対する深い思いから「動脈硬化学の未来 Joy of Fatty Acid Secrets ~血管から臓器病態へ~」とさせていただきました。 これまでさまざまな機会に大勢の先生方と協働したり議論してきた脂肪酸研究の新しい世界をそのおもしろさとともに、動脈硬化学の未来像として皆様と共有したいと思っています。

特に若い先生方へのメッセージとして、わからないことを知ろうとする営みの楽しさを、研究の醍醐味を、感じていただく機会になればと念じております。


会長:梶波 康二 写真
第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会
会長 梶波 康二
(金沢医科大学医学部 循環器内科学)

第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会を、2025年7月5日(土)~6日(日)につくば国際会議場において筑波大学島野仁先生とともに開催させていただきますことを、大変光栄に存じます。今回は、「動脈硬化学の未来 Joy of Fatty Acid Secrets ~血管から臓器病態へ~」をテーマとし、基礎・臨床・社会学など、幅広いプログラムを企画し、関係者一同とともに、実り多き集会になるよう努める所存でございます。

皆様ご承知の通り、動脈硬化性疾患は、心疾患や脳血管疾患発症の背景に潜在する病態として重要であり、超高齢社会を迎えた日本において、その臨床的意義が増大してきました。脳卒中心臓病対策基本法の理念にも謳われている通り、生活習慣の包括的コントロールによって「予防」を目指すことが可能である点が特筆されます。学会テーマとして取り上げた脂肪酸はもとより、従来認知されてきたコレステロールなどの脂質を始め、糖尿病や高血圧などいわゆる危険因子との関係においても、常に新しい知見や治療法が登場しています。これら様々な分野の専門家が集う場としてプロブラムも工夫されております。

動脈硬化克服に向け「多職種によるワンチーム」で取り組むための一助として、また動脈硬化に興味をお持ちの皆様にとって、必ずや本集会がお役に立つものと期待しております。どうか積極的なご参加をお願い申し上げます。